LOGINあの日、私とその親友であるカイル・エリオンは家へ帰る途中で何者かに誘拐された。
そして気づいた時はもうどこか分からない暗い暗い檻の中に閉じ込められていた。 なぜ閉じ込められていたのかはあまり覚えていないけど、多分親から身代金としてお金を手に入れる為に利用しようとしたのだと思う。 自分の親は確かに裕福だった。それは認める。 けど裕福は幸せとイコールではない。 お金があるから周りから違う目で見られ誰1人して私を対等に扱おうとした者はいなかった。 親もお金が全てという考えの人でお金で私の人生を奪おうとした。 私は小さい頃から一人ぼっちだった。 檻の中にいる時、既に私は全てを諦めてしまっていた。 意識が鮮明になってきて目を開けるとそこには先に目覚めたカイルがいた。 盗賊達は私たちを利用して親から金を取ろうという計画らしい。 それでもし、親が金を出さない時は…死ぬだろうとそう考えていた。 「もう、ダメかもな俺ら。親にも愛されず、学校でも特別待遇の様に周りから変なプレッシャーを受け、最後はこんな誘拐犯に捕まって殺されて…もうこんなの嫌だ…もう死んだ方がマシだ!いっそ殺してくれ!」 わたしは久しぶりに見た。あんなに負けず嫌いで不器用なカイルがこんなにも悲しそうに弱音を吐くなんて。 確かに、こんな状態になったら誰でも怖いよ。私も実際心の中じゃ辛くて苦しくて…今にも泣きそうだ。 けど、私はそんなカイルが許せない。私が知ってるカイルは…こんなところで泣いちゃダメだ! 私はいつの間にか、カイルの頬に思いっきりビンタしてしまった。 パンッ! 「あんたってすぐ諦めるよね?なっさけない!死ぬなんてダサい言葉で何でも片付けようとすんじゃねーよ!確かに今の暮らしは辛いことばかりだけど、まだ私たち子供だから、…きっと、大人になれば自由になれる…だから…死ぬなんて言葉で逃げるなよ…頼むから…」 本当にカイルが弱いなんて思ってもいない。けど、こんなに弱気になってるカイルを見続けるのはもう嫌だ。 本当に弱いのは私だ。自分の弱さを隠してカイルのせいにするなんて…。 けど、カイルはそんな私に言った。 「…そうだな。大人になれば自由だよな。こんなとこさっさと出て、2人で自由を手にしよう!」 「カイル。…うん!」 カイルの顔を見ていつの間にか私にも元気が出た。 …そう、こいつがいるから私も強くなれるんだ。 私は負けない…絶対に自由を手にして見せる! そして…いつかきっと! 今はその気持ちを胸にそっとしまい込み、カイルと共に牢から脱出する。 外に出てから私たちは盗賊達を倒していき、その中のボスともう1人大柄で強そうな奴と戦い勝利したと思っていた。 しかし、そこで油断した私は大柄な男にやられてしまい、その場で気を失ってしまった。 その間、カイルと戦っていても大柄な男が強すぎる為にカイルもボロボロにやられてしまう。 「ぐっ……待ってろよエミル…俺が必ず…助け出すから…」 そして、カイルは影を広げていないにも関わらず剣を軽く振った。 するとエミルの頭を掴んでいた腕がスパンと切り落とされ、エミルは地面に落ちた。 私はその落ちた衝撃で目を覚ました。 そこには全身を黒い何かで纏っているカイルが大柄な男を睨みつけていた。 「よくもエミルを!許さねえ!」 するとカイルはいつの間にか大柄な男の目の前に立っていた。 「イツノ間ニ!?グワァァァァ!!!」 そしてカイルは大柄な男を再生が追いつかない速さで切りまくる。 ズタズタに切られた身体は再生するのを止めてしまい、大柄な男の意識は盲ろうとしていた。 「アッ…アガァ……」 凄い…カイルのどこにこんな力が?けど、何だろう…この感じ。これは本当にカイルなの? するとカイルは剣から謎の影を大きく広げると大柄な人を包もうとしていた。 「はぁ、はぁ、お前を…喰ってやる!」 「ヤ、ヤメ…ヤメロぉぉぉぉぉお!!!!!!」 カイルはそう言うと口角を吊り上げ、そしてカイルの剣から出てきた影が大柄な男を飲み込んだ。 飲み込むとカイルの赤かった目はいつもの黒目に戻り、剣から出てきた影も無くなりカイルはその場で気を失って倒れてしまった。 私は心配でカイルのそばに寄ってカイルが生きているのか確認すると、私は思わずカイルを抱きしめた。 …こんなの、起きてる時は絶対に出来ない。守ってくれてありがとう…でもごめんね…私、明日からいないから。 私は抱きしめながら涙をひとしきり流すとそのままカイルをおんぶして外に出た。 それから私達は警察に助け出され、それぞれの家に送り届けられた。 カイルの親は泣きながらカイルの事を強く抱きしめていた。 それを見て私はホッとした。 カイルの親はカイルをこんなにも愛してたんだなって…そう思えただけでも、自分自身のように嬉しい。 しかし、私は結局カイルにさよならを言えないまま父親に連れていかれた。 家に着くとそこには纏められた荷物があり、父は私にコートを渡してきた。 「全く、お前はいつまで経っても私に迷惑ばかりかけるのだな。もうこんな国さっさと出て行くぞ。そのコート着たら出発だ。」 父はそれだけ言うと荷物を執事達に持たせて外に出ようとした。 「ちょっと待ってよ!」 「何だ?」 「私…私…辛かったのよ…誘拐されて…殺されるかもしれないって!それなのに…少しぐらい、心配してくれても良いじゃない!」 自分のせいでこうなった事ぐらい分かってる。でも、何の心配もせずにこんなにアッサリ終わらせるなんて… 私はすすり泣きしながら思わず父に反抗した。 しかし、父はその言葉に対して溜息を吐いて言った。 「お前がこんな目に合ったのはカイル・エリオンと一緒に居たからじゃないのか?私の言うことを聞かなかったからバチが当たったんだよ。くだらん、そんな事で心配してる暇などない!分かったらさっさと出るぞ。」 そう言って父は家の扉を開けて出た。 …カイル、私は間違ってなんか無いよね?父はあんな事言うけど、私とあんたの関係は間違ってなんかないんだよね? 私は悔しさで涙が出そうになったが手をグッと握りしめて我慢した。 渡されたコートを着て自分の荷物を持って扉を出ようとした時、何処からか声が聞こえた (…辛いよな…こんな世界、間違ってるよな?) 「誰?」 私は振り返ってみるがそこに人はおらず、私は気のせいだと思ってそのまま家を出た。 それから私と父達は砂漠で移動する為の夜間用の馬車に乗ってシルフへ行こうとしている。 私は出発してからずっとイフリークを眺めていたが段々とイフリークの街がどんどんと小さくなっていき、しばらくすると見えなくなってしまった。 「さよなら、イフリーク…カイル、元気でな。」 イフリークが見えなくなると私はそれだけ言って部屋へ戻った。 部屋に帰っても特にする事はなく、ベットに寝転がりながら只々時間が過ぎて行くのを待っていた。 「シルフなんて…行きたくない。」 ポツリとそれだけを残し、疲れた私はそのまま眠ってしまう。 「んっ…ふぁ~…よく寝た。もう朝かな?」 私はしばらくの時間よく寝てたのかすごく気分が良かった。 「いけない…ご飯食べてなかったわ。とりあえず食べ物何かあるか聞いてみよう。」 私はそう思い、部屋の扉を開けた。 「…えっ?」 私の目の前には血塗れになって倒れた職員の人達の死体が廊下の所々に倒れていた。 「何…これ…どうなってるの!?…お父さんに言わなきゃ!」 私は慌てて父の部屋まで走り、部屋に着くと思いっきりノックした。 ガチャッ! ノックしたと同時に扉が急に開き、私は前に倒れそうになった。 「うわっ!あれ、開いてる…嘘っ!?」 そこには斬り刻まれ過ぎて見る影もない父がいた。 顔は左目だけ取れていて身体中には斬り刻まれ過ぎた事で黒のスーツは真っ赤に染まり、背中を壁にもたれさせていた。 いくら憎い親といっても、こんな事望んでいない。 誰がこんな事を…その相手は一体何が目的でこんな事を…。 「あれー?こんな所にさっき寝てた女の子がいたぜ。」 後ろから声が聞こえ、振り返るとそこには金髪の男と緑髪の男が剣を持って立っていた。 2人とも見た感じ私と同じくらいの年だと思う。 「あんた達は何?ここの乗客じゃないよね?」 私がそう言うと緑髪の男が答えた。 「そうだ。俺達はここの乗客を全員殺して金品を盗む盗賊だが、俺達と同じくらいの子供にはチャンスを与えている。」 「チャンス?」 「そうだ。命を助ける代わりに、盗賊になるかどうかだ。」 「はぁ!?何言ってんのあんた!私の父親殺しといて仲間になるか選べって、何様のつもりよ!」 私はあまりにも勝手な事を言う緑髪の男に怒鳴るがそいつは父親の死体を見ると溜息を吐いた。 「私の父親…か。こんな奴を父親と呼べるのか?」 「えっ?」 「こいつは、僕達に殺される前にお前を殺してないか聞いてきた。勿論まだ殺してないからそう答えたが、このおっさんはその後なんて言ったと思う?」 すると今度は金髪の男が代わりに言った。 「良かった、あいつが生きてるなら俺の計画はまだ大丈夫だ!あいつは私の事業を成功させる為には絶対に必要なのだ。…なぜお前が必要なのか、こいつは最後にボロを出したぜ。」 「シルフの金持ちの嫁に出して自分の事業を向上させる、だとさ。つまり、お前はこの親にとって事業を成功させる為の駒に過ぎないらしいぜ。」 「その言葉に俺達はキレてこいつをボッコボコにしてやったよ!こんな親は一回死んだ方が良い!」 私は2人の話を聞いてショックを受けた。 昔から父親が私に関心が無いのは知っていたが、まさか自分の娘を事業の為の道具としてしか考えてなかったなんて… 落ち着け…私。この親が私の幸せよりも自分の事しか考えて無いなんて分かってた事じゃ無いか! 私は心の中でそれを訴えた。 「許せない…」 「だろ?まあ俺達の仲間になればさ、そんな事忘れさせてや…」 「許せない!!」 その瞬間、私は怒りで無意識に魔力を全て解放してしまい、自分の周りから魔力によって生み出された大量の水が暴発した。 暴発した水は水流となって馬車内を大洪水に変えてしまい、そのまま大型の馬車は圧倒的な水流によって盛大にぶっ壊れた。 馬車を引いてた馬の鎖は取れてしまい、そのまま馬は何処かへ走って行ってしまった。 暴発した水流によって壊れた馬車の中からエミルだけ出てきた。 「許せない…親も、盗賊も…何もかも許せない。」 私はそう言って馬車から出るとシルフへ行く前に来たイフリークの方角を見た。 …そうだ、私だけでもイフリークへ帰ろう…そしたら、またカイルに会える。 そう考え、私はイフリークを目指して歩いた。 その後、2人は馬車の中から出てくると帰って行くエミルを見てボソッと言った。 「あの女…恐ろしい…」 「あぁ、初めて女見てチビってしまった…」 私はイフリークへ向かいながら砂漠道を歩いている。 虚しい…なんで…なんでこんなにも虚しさだけが残ってるんだろ。 歩きながら虚しい気持ちが消えない私は砂漠道をひたすら歩く。 (辛いよな。この世界、間違ってるよな?) 歩いてる途中、イフリークを出発する前に聞いたあの声が再び聞こえてきた。 私はその声が誰なのか聞いてみる。 「誰、誰ですか?」 (僕?僕は、君の味方だよ。) 謎の声はとても穏やかそうに聞こえるがどこか不気味な感じがする。 (君はあれだよね?今からイフリークへ戻るんだよね?) 「そうです。戻って、カイルにもう一度会いたいか…」 (ウンウン分かるよその気持ちぃ!好きな人にまた明日会いたいと思うのは人間なら当たり前だよ!けどね、そのカイルって人がもしだよ?もし… …君の事を忘れて違う女と楽しそうに話してたら?) 「…えっ?」 (人なんて日にちが空いたらコロっと気持ちが変わってしまうもんだよ?多分君がこの砂漠道を歩いてイフリークに戻るまで大体2週間。この期間までに君は早く彼に会ってあげないと…多分後悔する事になるよ?) その声の人は私を励ましているのか面白がっているのか分からないがとてもオーバーな感じで私に言った。 「後悔って何?…私の事どう思ってるか知らないけど、あんたに何が分かるのよ!」 (分かるよぉ~。確かに訳わかんない僕の話聞いて怒りたくなるのは分かるけどここは僕の意見も参考にしたら良いよって話だ。) (うひひひ!君がイフリークに帰った時、そのカイルという男に会って安堵するのか、それとも絶望するのか。その事がとても、心配なんだ。…おっと、今日はここまでの様だな。じゃあね、カイルに会った時の感想聞かせてね。) そう言うとその声はそれから聞こえなくなった。 何なのあれ。不愉快にも程がある。カイルが私の事忘れて他の女と仲良くしてる?そんな筈がない! カイルは私が居なくなってきっと私と同じ気持ちの筈よ!私が早く、早く会ってあげないと! そして私は再び砂漠道を歩き始めた。 砂漠の過酷な環境と歩いている途中に現れる猛獣を相手にしながらもやっとの思いでイフリークに帰り着いた。 2週間の間、食料は猛獣の肉を食べていたが水分は自分の魔法で生成した水を飲んで喉を潤していた苦労がやっと終わった。 これでやっとあいつに…カイルに会える!どうしよう、私どんな顔してあいつに会えばいいだろう? 私は2週間しか経っていないがとても懐かしく感じるイフリークの街を見渡しながらいつもカイルと一緒にいたあの場所へ向かった。 いつもの場所に着くとそこには綺麗な黒髪に身長が低めの男の子が両手に持った剣を規則正しく振っていた。 私はその様子を遠くの物陰から見ていた。 どうやって喋りかけるか凄く悩む。会いたいけど会った時にどう声を掛けたらいいのか分からない。 この時初めて言葉が難しいと感じた。 そして私は腹をくくり、いつも通りの私ならきっといける!そう思い、物陰から出て行く準備をした。 しかし私が物陰から出て行こうとした瞬間、カイルの方へ向かった1人の女の子がいた。 「あれは…ハンジ?」 私と友達であったハンジがなぜカイルの元に?それに、何か手に持ってる? ハンジの手にはピンク色の弁当箱に汗を拭くためのタオルが持たれていた。 そしてハンジはそのタオルと弁当をカイルに渡すとカイルは素振りをするのをやめて一緒に食事をしていた。 「えっ…あの2人、そんな仲だったの?」 何を漁ってるの私…私がハンジにあの手紙を渡す様に頼んだんじゃない。そこで話してる内に仲良くなっただけの話よきっと…。 友達として喜ばしい事の筈なのに心の中では何かが詰まった様な感じがする。 そうよ、カイルは私の事を忘れて他の女と付き合うわけがない…きっと、ハンジも私の代わりにカイルを慰めてるだけだ。 その時の私は気持ちの余裕が無かったのかもしれない。 考えれば考えるほど、カイルとハンジが付き合ってる様にしか見えなかった。 次の瞬間、ハンジが取った行動に私は絶句した。 私は会話の内容が聞こえなかったご弁当を食べ終えた2人がその場から立ち去ろうとした時、どういう訳かハンジがカイルに抱きついていた。 えっ…どういう…こと?本当にあの2人は…付き合っているの? 私はその時既に正常な判断が出来ないのか更に私はおかしくなっていた。 カイルが…カイルが別の女の人と付き合ってるなんて…こんな時に私が行っても歓迎なんてされる訳ない。 そう思い私はカイルに会うことなくその場から逃げる様に去ってしまった。 その後、私はいつの間にかイフリークを出て元来た砂漠道を歩き始めていた。 私はいつの間にか涙がポタポタと落ちていた。 感情を抑えようとしても私の目から落ちてくる涙は止まらず、どんどん流れ落ちていく。 「なんで、なんでこうなの…どうして、私にはいつも辛い事ばかり起こるのよ!」 私は悲しみのあまり、何もない砂漠に向かって叫んでしまった。 (どうだった?君の好きな人は?) 突然私に話しかけてくる不愉快な声の人。どうしてだろうか、今は誰かにすがりたくて仕方なかった。 「…私はもう、誰も信じられない…」 (あー、察しました~。やっぱりカイルって男がやってしまったのかー!?これは辛い辛すぎます!) まるで解説者の様に言う声の人に腹が立ち、私はブチ切れて何も無い砂漠に私を中心とした広範囲の水の竜巻を起こした。 「うるさい!お前なんか消えてしまえ!!」 しかしそこにその声の人がいるはずが無い為、私の魔法は意味を成し得ないまま渦巻いているだけだった。 (おいおい、落ち着きな。僕は根が軽い奴だから嫌な奴に見えるかもしれないけどさ、僕は君の味方だよ。その証拠に、いい情報教えてやるよ。) 「いい情報?」 (そうだ。それはな、カイルとハンジっていう女が付き合った原因は…ハンジのせいなんだよね~。) 「ハンジの…せい?」 (そうだよ。ハンジはね、君がいなくなる機会をずーっと待ってたんだよ。君が居なくなると好きなカイルと付き合えるじゃん。それに、君の手紙のお陰でカイルと更に話しやすくなって今じゃあんな感じじゃん。) 「つまり…私は、利用されたって事?」 (そーなっちゃうかな?まあ、あんな事してたんだからそう考えるしかないかなー。) 私はいつの間にか手を握りしめ、プルプルと震えていた。 許せない、あんなにも仲の良かった友達が私を利用して好きな男を奪ったなんて… 許せない…許せない! 「許せない…私にはカイルが…カイルが必要なのに…そのカイルを奪ったあの女を…許せない!」 (許せないよなぁ!間違ってるよなぁ!そうだよ、こんな世界間違ってるんだよ!どうだ、ここは1つ契約しないか?) 「…契約?」 (そうだ、君の事を考えると可哀想で仕方がない。そんな君には僕と契約して君の魔力に見合った強大な力を授けてあげるよ。) 「契約…強大な力…」 私はもはや自分の思考がゴチャゴチャになり過ぎて意味が分からないがこいつが言ってる事は確かなんだ。 私は一先ず声の人の話に乗ることにした。 「いいわ、契約する。もう…失うものなんて何も無いんだから。」 (決まりだな、まあ精々有効に使うんだな。僕はこれで失礼するよ、じゃあね~。) そう言ってその人の声は消えてしまった。 「…うっ、…うぅ…頭が…痛い!」 私は急に頭が痛くなり、その場で気を失ってしまった。 それからの記憶は本当に曖昧だった。私は強大な力を手にした代わりに、相手に対する思いやりや優しさなど人間としての感情が薄くなっていた。 あるのは、人間は醜くこの世界は間違っているという歪んだ心。 仲間として一緒に行動しているのは、あの時父親を殺した金髪のライクと緑髪のニケル。私は気を失ってから2人に助け出され、私も盗賊の一員になる事を決意した。 それから私はライクとニケルと3人で盗賊として生活を始め、現在はイフリーク壊滅により集団でシルフに向かった馬車を襲撃していたのだ。 私が全てを思い出した時、場面は現在の操縦室に戻り、レヴィアタンは言った。 「あの時にしたお前との契約は悪魔の契約なんだよねー。まぁ僕は前から他の人間の体を奪ってるからお前の体を奪う事はもう出来ないんだけど、代わりに僕はお前の体に憑依しやすくなったんだぁー!」 「憑依しやすくなったって…どういう事?」 「あ、そっか!お前はまだ知らないんだったよな!いいよ、教えてやるよ。…お前は契約で手にした力を使う度にお前の心に隙間が空くんだよ。その隙間には僕しか入れないんだがそこに僕が入ればお前の体を自由に操れるんだよ。」 「自由に…操れる?」 「そうだよ!お前の心の隙間が空けば空くほど、僕はお前の体を操作しやすくなり操作する時間も増える。」 「それはつまり、あんたは私を操作してハンジを殺したの?」 エミルは再び剣を持つ力を強めた。 しかし、レヴィアタンはいつの間に移動したのかエミルの首を腕で締める体勢を取り、エミルは焦って力を緩める。 「なっ…?」 「慌てんなって。僕はお前の体を操作してた訳だがお前を操作するにはある感情が強く無いと操作できないの。僕が君を操作する為に必要な感情って何か分かるかい?」 「分からないようだね…それは、嫉妬だよ!君は、8年経った今でもハンジに対する嫉妬が残ってたんだよ!つまり、君の中にある嫉妬が僕の操作を許してしまいハンジを殺す事になってしまった!」 「嫉妬…」 「そう、嫉妬してたんだよ君は!だから僕はハンジを殺した!これって…君がハンジを殺したって事にならない?」 レヴィアタンがそう言うとエミルは衝撃のあまり手に持った剣を離してしまった。 「私が…ハンジを…殺したって?」 「ウヒヒ…アハハハハハ!!今更気付いても遅いんだよ!あー、これだから女の嫉妬は面白いんだよねぇ。自分は正しい、自分は間違ってない、間違ってるのはあの女だ!その感情がどれだけ醜い物なのか何にも分からない馬鹿は大好きだよ!」 「私は…そんな…そんな!」 するとエミルの周囲から黒いオーラが発生し始め、それらがエミルを囲み始める。 「いよいよ悪魔化が始まったか。さぁ…嫉妬によって生まれた絶望を今ここで解放しろ!そして、悪魔と化せ!」 ミーナはエミルの黒いオーラを見て思い出した。 これは…あの時エバルフさんにも起きてた悪魔化? だとしたら、このままだとエミルさんが悪魔になってしまう! しかし、今はグレンも倒れているし私が出てもあの悪魔には手も足も出ない。 でも、少しでも足止めしないと…何か…何かやらなければ! 「いい加減にしてよ!この趣味の悪い馬鹿悪魔!」 「あぁ?今いいとこなのによ!それとも何かな?君は早く死にたいのぉー?」 するとレヴィアタンの体は一瞬でガスに拡散すると一瞬でミーナの前に移動した。 そして自分の5本の指先を細長い鋭利な針に変えてミーナの顔の前に向けた。 「そんなに死にたいなら…今すぐ殺してやるよ!」 レヴィアタンはそう言ってミーナを脅すと、ミーナはブルブル震えてその場にへたり込んでしまった。 ダメ…足に力が入らない…。やっぱり、この悪魔には言葉でも勝てない…。 私は、グレンがいないと何も出来ないのが本当に情けない! ミーナの目からはいつの間にか自分で意図せずに涙が流れ始めていた。 「ふん、まあこのおまけ女は後でいいや。先ずはエミル、あんたの悪魔化が先だよ。」 既に黒いオーラがエミルの全身を取り囲もうとしていた。 「私は…ハンジを殺してしまった…もう…生きいく資格がない…」 エミルの意識が徐々に遠のいていきそうになり、黒いオーラがどんどん濃くなっていく。 それを見て楽しんでいるレヴィアタンは笑いながら言った。 「アハハハハハ!自分の憧れだった強い女がこんな風に落ちぶれた姿をカイルって男が見たら悲しむかもな?もしかしたら、あいつも絶望したり…」 ーその刹那、レヴィアタンの両肩は一瞬で切り落とされ、腕がない状態になってしまう。 切り落とされ腕はそのまま拡散し、再びレヴィアタンの腕に再生する。 「なっ!?今俺の腕切った奴がいるのか?誰だ!さっさと出てこい!」 レヴィアタンがそう叫んでも返事は返ってこなかった。 すると今度は切れ味の良い切る音が連続で聞こえるとレヴィアタンは全身ズタズタの状態になってしまい、そのままガスに拡散してしまう。 「何なんだよ…さっきか…!?お前は…イフリークの騎士団団長!」 なんと、そこにはイフリーク最強の騎士。そして、エミルの幼馴染のカイルが、双剣を両手に持ちながら立っていたのだ。 私は…もう…生きる資格なんてないんだ…ならいっそ…死んでた方が良いのかもしれない… エミルは既に生きる希望を失い、絶望の淵に落ちる寸前だった。 「何なんだよ…さっきか…!?お前は…イフリークの騎士団団長!」 イフリークの騎士団団長?まさか、そんな筈無い。だって、イフリークの騎士団団長ってカイルの事だよね?今更カイルがこんな私を助けに来る訳無い。 そう思いながらエミルはゆっくり顔を上げていく。 エミルは驚いた。そこに居たのは綺麗な黒髪に8年前とあんまし変わらない小柄な男。だけど、何処か頼りになる背中を私は知っている。 …カイルだ!カイルが、私の目の前にいるんだ! 「か…カイル?カイル…なの?」 私はかすれた声をカイルに伝える為に振り絞って声を出した。 すると、カイルは私の方へ向くと座ってる私と同じ位置までしゃがみ込んだ。 「エミル、久しぶり。って、こんな時に呑気な事言ってる場合じゃ無いよな。」 カイルは何やら照れ臭そうに頭をかいていた。 「お前の事はあの盗賊の二人組から聞いたよ。ごめんな、俺があの時お前に辛い思いさせて。」 エミルはカイルの言葉に対して何か喋ろうとするが涙のせいで呼吸が不安定になり、うまく喋れない。 喋れないエミルを見て、カイルは続けた。 「でも、俺もお前が居なくなって辛かった。ずっと俺の目標だったエミルが何も言わずに居なくなった時、俺はどれだけ悲しんだか…。」 「カイル…ごめん…ね…。」 エミルはようやく声を出せた。喋ると抑えきれなくなる感情が込み上げてくる。 するとさっきガスで拡散した筈のレヴィアタンが再び体を形作った。 それに気づいたミーナがカイルに向かって大声で叫んだ。 「カイル君!危ない!」 「いつまでも感情に浸ってんじゃ…って体が…動かない。」 レヴィアタンが爪でカイルを突き刺そうとしたが体が動かなくなる。 「俺の魔法でお前は10分経つか俺が解除するまで動けない。大人しくしてろ。」 そしてカイルは再びエミルの方へ顔を向ける。 カイルは顔を見合わせるとそのままジッとエミルを見つめた。 「カイ…ル?」 そして次の瞬間、カイルはエミルを抱きしめていた。 それにはミーナも驚きのあまり、手を口に抑えていた。 「えっ…ちょっ、カイル!?」 それと同時に、エミルは動揺し周りにある黒いオーラがどんどん弱まっていった。 そしてカイルは抱きしめたまま口を開いた。 「エミル…もうお前に辛いなんてさせない!辛い時は俺の側にいろ…だから…もう、俺から離れないでくれ…頼む…よ!」 カイルはそう言ってエミルを抱きしめる力をどんどん強くしていった。 するとエミルの周りにある黒いオーラは徐々に消えていった。 黒いオーラが消えるとエミルもカイルの背中に手を回し、抱きしめるとそのままカイルの胸の中で抑えていた感情を解放した。 「ウグッ…ヒっぐ…」 ずっと、カイルの側に居たかった。それはカイルも同じ気持ちだった。 エミルが泣いているのはお互いの気持ちが同じだった事を知れて嬉しいかったのかも。 ミーナはそんな風に見ていた。 しかし、レヴィアタンは体を硬直させられた状態で空気をぶち壊そうとしていた。 「ケッ!バッカじゃねーの?寒気が走るよ、人間のそういう綺麗事。この女が今まで何をしていたか、教えてやろうか?こいつはな、ハンジって女を…。」 するとレヴィアタンの体にクロス状に切り傷が入り、そこから血が噴き出した。 カイルはいつの間にかエミルを抱きしめておらず、再び双剣を持っていた。 「エミルが盗賊に入ってしまったのは、俺がエミルを守れなかったからだ。だが、ハンジを殺したのは間違いなくお前なんだ!」 そう言うとカイルは目を赤く変え、双剣を黒く変色させるとレヴィアタンを連続で斬りまくった。 ある程度斬られまくられたレヴィアタンはそのままガスに拡散し、姿を隠した。 「僕に剣なんて効かない!さぁ、こっから俺の時間だ!」 ずっと、カイルの側に居たかった。それはカイルも同じ気持ちだった。 エミルが泣いているのはお互いの気持ちが同じだった事を知れて嬉しいかったのかも。 ミーナはそんな風に見ていた。 しかし、レヴィアタンは体を硬直させられた状態で空気をぶち壊そうとしていた。 「ケッ!バッカじゃねーの?寒気が走るよ、人間のそういう綺麗事。この女が今まで何をしていたか、教えてやろうか?こいつはな、ハンジって女を…。」 するとレヴィアタンの体にクロス状に切り傷が入り、そこから血が噴き出した。 カイルはいつの間にかエミルを抱きしめておらず、再び双剣を持っていた。 「エミルが盗賊に入ってしまったのは、俺がエミルを守れなかったからだ。だが、ハンジを殺したのは間違いなくお前なんだ!」 そう言うとカイルは目を赤く変え、双剣を黒く変色させるとレヴィアタンを連続で斬りまくった。 ある程度斬られまくられたレヴィアタンはそのままガスに拡散し、姿を隠した。 「僕に剣なんて効かない!さぁ、こっから俺の時間だ!」 「ー[嫉妬の魔力(エンヴィー)]。愚かな人間に鉄槌の雨を降らせ。」 レヴィアタンは空気中の黒いガスで無数の拳を作り出し、それら全てをカイルめがけて飛ばした。 「僕の嫉妬の力を思い知りやがれ!」 カイルはそれら全てを双剣で迎えた。 目に見えない速さで斬りまくるカイルの剣さばきは飛んでくる無数の拳を斬りまくり、拳はどんどんガスに拡散した。 「馬鹿な!僕の拳が当たらないだと!?」 目に見えない場所から喋るレヴィアタン。 「俺のこの赤い目の前ではこんな攻撃意味ない!それに…」 カイルは剣を軽く振るとさっきまで見えなかったレヴィアタンが現れた。 「グハッ!…何故だ!何故僕の場所が分かった?」 レヴィアタンの腹に剣の切り傷が再び入ったが、ガスに拡散し再び姿が消えた。 「何度消えても同じだ。」 カイルが双剣を振りまくると、レヴィアタンの姿が再び現れた。そして何度も何度も斬られまくる。 「ぐあぁぁ!!!何故だ!何故僕に剣が効くんだ!?」 今度はガスに拡散する事なく、血だらけのままレヴィアタンは立っていた。 「俺の赤い目は対象の影があればどんな物質だろうと切れる事が出来る。空気には普通影なんてないが煙には影がある。この黒いガスは影があるから俺の剣で斬れるんだよ。」 カイルは普通の目の時は人や物など、触れるものは全て切る事が出来るが、水や空気など触れられても切れない物は切れない。 しかし、赤い目になるとそれら全て影が出来れば切る事が可能になるのだ。 「お前はそのガスが無敵だと勘違いしてるようだが俺にとってお前は天敵。なんせ、そのガスは影が濃く浮き出るから俺の攻撃範囲が広くなるだけだ。」 「くっ、クソが!…仕方ない、ガスは消すしかないようだな…」 睨みつけながらそう言ってレヴィアタンはガスを消した。 「まさか、ここまで強いとは思わなかったぞ。イフリーク騎士団団長、カイル・エリオン。だが、勘違いするなよ?俺がさっきのガスに頼ってると思ったら大間違いだ!さっきのは俺の力の3割ぐらいしか出してないんだよ!今から、少しだけ本気出してやるよ!」 するとレヴィアタンの腕はベチョベチョと音がしたスライムの様な物に変化した。 「僕がこの力を使うのは何年ぶりだろうか?…うひひひ、これでお前は終わりだ!」 レヴィアタンは腕を思いっきり振るとベチョベチョとした液体は周りに飛び散った。 飛び散った液体はミーナやエミルの所にも使った為、カイルは影を使ってエミルとミーナの前に影の盾を作った。 液体は部屋中に飛び散り、液体によって周りの壁や床などが徐々に溶け始めた。 「この腕は触れたらどんな物質も溶かしてしまう最強の液体で出来ている!あまりやり過ぎるとこの部屋自体が溶けちまうから注意しなけりゃな。」 レヴィアタンの言った通り、液体によって部屋の壁が溶けて部分的に穴が空きはじめ、外が見える状態になった。 「あ、注意する必要ないか!こいつらもう殺しちまえば良いもんな!」 そう言ってレヴィアタンは腕を思い切り伸ばし、カイルに攻撃した。 カイルは双剣を重ねる事で目の前に影の盾を作って防いだ。 「くっ、なんて…力だ!」 「おやおや、お前の得意な剣技はどうした?全然使ってこないじゃねーか?」 そう言われてカイルは剣を振ろうとするがもう片方の腕が伸びてきた為、それを防ぐ為に剣を振らずに剣を重ねて影の盾を作った。 「おいおい、そんなんじゃ僕に勝てないよ?ほら、ほら!」 そう言ってレヴィアタンは連続で腕を伸ばして攻撃してきた。 それを全て影で防いでいるが反撃できない為、結構押され気味だった。 「焦れったいなー、じゃあ思いっきりパンチするよ?いい?…って聞かなくても殴るよ!」 そう言ってレヴィアタンはさっきよりも断然に威力のあるパンチをすると、カイルは防いだまま部屋の端まで飛ばされ、その勢いが消える事なくそのまま部屋をぶち破って後ろの部屋まで飛ばされた。 「隙あり!そのままこの液体で溶かしてやるよ!」 そしてレヴィアタンはそのまま液体の腕を両方カイルが飛んだところへ飛ばした。 しかし、何か異変を感じたレヴィアタン。 飛んで行った液体の腕はカイルを溶かした感触が無く、どういう訳か液体の腕が半分くらい無くなっていた。 「おかしいぞ?あいつを溶かした感触がない…それに、俺の腕が不自然に消えてる?」 レヴィアタンは不思議そうに無くなった腕を見てるが液体である為すぐ再生して元に戻した。 しばらくすると部屋の向こうからカイルが戻ってくると、体の周りと剣から黒いオーラが纏われていた。 黒いオーラを纏ったカイルはさっきよりも目つきが鋭く変わり、レヴィアタンを睨みつけていた。 「あれは、あの時の…」 「エミルさん、何か知っているんですか?」 ミーナはエミルの側に寄って聞いた。 「私とカイルが一度誘拐された時に、カイルの体から急にあの黒いオーラが出てたの。さっき私から出ていたオーラみたいなものが。」 そのオーラというのは、一瞬影が浮き出ているかの様に思えるがカイルの黒いオーラはエミルと同じ悪魔化した時のオーラと同じだった。 レヴィアタンもそれに気づいてたのか、カイルを見て驚いた表情をしていた。 「お前のその魔力は…まさか!」 バクゥッ! その直後、カイルの右の剣から影で作られた蛇が口を広げながら出てきて、レヴィアタンの右腕を一瞬で喰い千切った。 「僕の腕が!…はっ!?」 レヴィアタンが次に気づいた時、カイルの両方の剣から影の蛇が作られ、口を広げながらレヴィアタンを襲う。 レヴィアタンは回避する為に体をガスにして拡散させ、天井へ移動した。 「くそっ!あんなもん喰らったら流石の僕も…」 今度は2体の影の蛇か合体して巨大な影の大蛇に変わり、天井向かってレヴィアタンを襲い、そのまま天井を食い破った。 「マズイ…このままじゃ私達まで巻き添えを喰らうわ。一旦操縦席から離れるよ!」 エミルは影の蛇に気をつけながらミーナを連れて操縦室を出た。 しかし、ミーナはある事に気づいた。 倒れたままのグレンを置いてきてしまった事に 「あっ!グレンがまだ倒れたまま!…エミルさん!グレンがあっちに…」 「今は自分の心配しなさい!」 そう言ってエミルはミーナの手を引っ張って扉を出た。 2人が出た瞬間、操縦室と後方の部屋との繋ぎ目が壊れてそのまま切れてしまい、グレンとカイルを乗せた操縦室だけの馬車はそのまま走って離れていってしまった。 「嘘っ!?…でしょ…」 「エミルさん!この部屋も壊れそうです!とりあえず早くエバルフさん達と合流しないと私達も…」 そう言ってミーナとエミルは離れて行くグレン達の馬車を見る事なく、馬車の中へ入っていった。 グレン…大丈夫!あいつは私なんかが心配しなくても生きて帰ってくるに決まってる!きっと…大丈夫…大丈夫… 操縦室だけを引いた馬車では、カイルが放った影の蛇によって天井を食い破られ、それによって部屋の壁が崩れてしまい外が丸見えの状態になっていた。 倒れているグレンとハンジの亡骸は崩れる間際にカイルが影を広げて2人が外に落ちないように包んで守った。 部屋の壁が無くなり、カイルは黒いオーラを纏いながら床の上を仁王立ちしている。 その前には、あの黒い影の蛇からどうやって避けたのか分からないが右の上半身を食い破られたレヴィアタンがカイルを睨みながら立っていた。 「貴様…僕を本気で怒らせたな!こんなもん再生すれば済むんだよ!」 レヴィアタンは食い千切られた右半身を再生させようとした。 しかし、レヴィアタンの右半身は再生するどころか食われた部分が腐りチリがボロボロと落ちていく。 「体が…腐っていく?」 「お前はもう俺には勝てねえ。とっとと俺に殺されてしまえ。」 カイルはそう言って二本の剣を構えると再び剣の刃が黒色に変色した。 「僕が、お前に勝てない?……………」 するとレヴィアタンは全身をスライム状に変え体の原型を崩して再び元の人型に戻った。 戻ったレヴィアタンは今度は人間の体ではなく、髪や腕、足などが人の形をした全身スライム状の化け物に変わっていた。 「ふざけんな…この僕が、悪魔の中でも上位中の上位の僕が…貴様ら人間なんかに負けるわけねーんだよ!!」 その瞬間、レヴィアタンは目に見えない速さで数本の髪の毛を触手に変えてカイルを襲わせた。 カイルは紅い目のお陰で触手を剣で防ぐが無数の触手が今までとは桁違いに威力があるので後ろに少しずつ押されていく。 「くっ!なんて力だ…」 「遅い…」 触手で攻撃していたはずのレヴィアタンは一瞬でカイルの隣まで移動していた。 それに気づくのが遅れてしまったカイルは距離を取ろうとするがレヴィアタンは一本の触手でカイルの体を動かない様に拘束した。 そして体幹をゴムの様に数十回ほどねじって勢いをつけ、そのまま一気にゴムの勢いを利用してカイルを勢いよく殴った。 殴られた威力で触手が千切れカイルは壁がない為そのまま砂漠の外に飛ばされてしまう。 飛ばされたカイルはそのまま砂漠の外へ放り出されそうになるが腕から黒い影が伸び、それが床を掴んで戻ってきた。 戻ってきたカイルは殴られたせいで口からとてつもない量の血を吐いた。 「グホォッ、グボァハ……」 「しぶといなぁ、この人間は?僕はこの姿になるとスピードがマッハ単位で動けるんだよ。それに、君はその赤い目で僕のスピードを追うことはできない。何故なら…」 レヴィアタンは再び一瞬で移動するとカイルの頭上で足を思いっきり上げた状態でいた。 「君はまだその目を最大限に使えてないから体が追いついてないんだよ。」 そしてそのまま足を振り下ろし、踵がカイルの頭に直撃した。 直撃したカイルの頭は床を貫通し、頭が埋まった状態になった。 「とどめだ!」 レヴィアタンは腕を伸ばしてその勢いでカイルを殴ろうとした。 するとカイルの体から黒いオーラが濃くなり、それらが全て影に変わると鋭い針に変わりレヴィアタンの体を突き刺しまくった。 「グハッ!」 影は頭が埋まったカイルを引き抜くとカイルは剣を握りしめ突き刺されて動かないレヴィアタンに斬りかかった。 「うおぉお!!!」 グシャ!! 「グアア!!バカめ!俺は何回斬られても再生す…」 「ー暗黒なる剣よ、存在が消えるまで食い尽くせ!」 そう唱えるとカイルが持ってる剣の刃から黒いオーラが強く吹き出てきた。 その黒いオーラを纏った状態でレヴィアタンを右の剣で最初に斬りつけてから次に左の剣、そして最後に両方の剣を上から斬りつけ、レヴィアタンの体は二つの黒い線が入った。 「グアッ…まさか、この僕が…人間に…人間ごときに…」 「まだだ!うおおおおおお!!!!」 カイルはそのまま手を止めることなく、黒いオーラを纏った剣で連続でレヴィアタンを斬りまくった。 斬りまくられたレヴィアタンは再生に間に合わず、体の原型が無くなるまで粉々に斬られた。 そしてそのままチリになり、レヴィアタンは完全に消えてしまった。 粉々に消えたレヴィアタンを見て、カイルは安堵したのか双剣を落とした。 「やった…のか?…俺はあの悪魔を…倒したのか?…そうだ、ハンジとあの男を早く出してやらないと…」 カイルは隅っこに自分の影で包み込んだグレンとハンジの亡骸を確認した。 ハンジの亡骸をカイルはただ呆然と見つめながらハンジの頬を撫でた。 「ごめんな、ハンジ。俺がもう少し早く助けに行けてたら、こんな事には…本当に、ごめんな…」 カイルの目からは自然と涙が流れ落ちていた。 ハンジを実際に殺したのは紛れもなくレヴィアタンだ。でも、そのきっかけを作ったのは自分だったとエミルの仲間の盗賊2人に教えてもらった。 確かに俺とハンジは仲良くしていたがあれはとんでもない誤解だった。 俺はハンジの事を友達とは思っているがそういった感情は持っていない。 だが、何を言っても言い訳にしかならない。こんな事になった以上、俺はゴチャゴチャ考えてる暇なんてない。 背負ってやる…俺は死んだ仲間、ハンジやエミルの辛い過去。全部を背負って生きてやる! それが今の俺に出来る償いだ。まずは、ハンジの墓を作らないとな… これから、カイルはその感情を一生背負って生きていくだろう。自分に守れなかった者の命をいつまでも忘れずに全てを背負いながら… 「なぁ~んてね、勝手に僕を殺さないでくれる?」 その瞬間、カイルは冷や汗を流した。 今自分の背後に感じる強大な魔力、先ほど倒したはずの化け物の気配がするのだ。 カイルが後ろに振り返ろうとした瞬間、腕で首を締め付けられカイルは苦しそうにその腕を叩いて抵抗した。 「ガッ…ぁあ!…がぁぁあ…」 「ウヒヒヒヒ、残念だったねイフリークの騎士団だーんちょ!あれ?どうして僕が生きてるのって顔してるね。何でかな?何でだろう?」 そして腕を離してカイルを解放するとカイルのみぞおちに鈍い音が響いた。 「ガハッ!」 「そんな事…今から死ぬ奴に教えても仕方ないよね?じゃあ…死ね、クソ人間!」 そう言ってレヴィアタンは再び人の姿から全身をスライム状に変化させた化け物の姿に変わった。 何故、粉々になったレヴィアタンが再び復活したのか。 レヴィアタンの魔法は自身の体を気体、液体、固体に変化させる事が可能であり、それは周囲にも影響が出る。 周りに水分と呼べるものがあればレヴィアタンはそれらを変幻自在に操り、また自身の魔力で水質を変化させる事が出来る。 そして、レヴィアタンにはもう一つ自身の魔力で可能な事がある。 それは周囲の空気中にある水分に自身の魔力を与え、その水分が周りの水分と融合していく事で肉体が滅びてもその水分で再び復活させる事が出来るのだ。 つまり、この世に水分と呼べるものがある限りレヴィアタンは何度でも蘇る事が出来るのだ。 「どうした!お前は剣が無ければ何も出来ないのか!?」 カイルはレヴィアタンと戦う為に床に置いた双剣を取ろうとするがレヴィアタンはそうはさせないと髪の触手を使って阻んだ。 すかさずカイルは自身の影を使い、無数の針の形状に変えて触手に対応しようとする。 無数の触手と影が同等の力で衝突するが黒帝剣技を使えないとカイルは自身の魔力を最大限に出すことが出来ない為、どうしても速さに対応できなかった。 そして、一本の触手が影の針をかわしてカイルの腹にぶち込んだ。 ぶち込まれたカイルはマッハの速さで襲って来た触手によって声を出せないまま血を吐いた。 カイルは体力の限界もあり、その場でフラッと倒れそうになるがレヴィアタンがそれを阻止するようにカイルの髪を掴んで止めた。 「うがああぁぁ!!!」 髪を掴まれカイルは痛みで悲鳴をあげた。 「おっと、寝かさねーよ?君には僕がさっき受けた痛みを直で受けてから死んでもらうよ!」 レヴィアタンは床に落ちてあるカイルの双剣を2本の触手で伸ばして持ち、自分の手に持ち替える。 「へぇー、良い剣だなぁ。これで今まで人を沢山殺ってきたのか?ウヒヒヒヒ!じゃあ今から君がやって来たことを僕がやってみるよ。」 そう言ってレヴィアタンは試しに一本の剣をカイルの肩から下に軽く下ろした。 「うがぁぁあああ!!」 カイルの肩から血が吹き出したが峰打ちである為、そこまで大量に血は出なかった。 「うっほー!切れ味最高だな!じゃあ、ウォーミングアップはお終い!…グッチャグチャに殺してやるよ。」 そう言ってレヴィアタンは二本の剣を思い切り下ろそうとしたその時。 ドカァァァァン!! 突然、倒れているグレンの周りから発生した大爆発に巻き込まれたレヴィアタンは全身を黒炎で焼かれた。 「グアアアアア!!あづい…あづいよ!!」 カイルは影で体を包み込んで大爆発から免れたがそれにより馬車は焼き尽くされ、馬達は黒炎によって焼死してしまった。 馬車が焼けたせいで床が無くなり、全員砂漠の地にいた。 燃えているレヴィアタンは体を黒い液体に変化させると体の火を消し、目の前のグレンの方へ視線を向ける。 そこには周囲と肘から指にかけた両腕に黒炎を纏われていて、倒れていたグレンがゆっくりと立ち上がっていく。 立ち上がったグレンはその場でしばらく目を閉じ、ゆっくりと目を開けると瞳は明るい深緑になっていた。 目を開けた直後、グレンは一瞬でその場から消え、レヴィアタンの目の前に移動した。 「なっ!…」 そして、そのまま黒炎を纏った腕でレヴィアタンを上空にめがけて殴り飛ばした。 黒炎によって腹に拳が入った直後、そこから爆発が発生して威力が増し、レヴィアタンは物凄い勢いで飛ばされる。 飛ばされてすぐにグレンは一瞬で上空まで空間移動し、両手を組んでレヴィアタンを迎え撃ち、そのまま地上へと叩きつけた。 ドゴォォォ!!!! 上空に上げられた以上のスピードで叩きつけられ、地面に着いた直後、まるで隕石が降ってきたようなクレーターが出来た。 「何だ?グレン…だよな?あいつ、あの悪魔をあんな簡単に…」 カイルは何が起こってるのかいまいち分かっていない顔でグレンの戦いを見ていた。 叩きつけられたレヴィアタンは顔からおびただしい血が流れ、体は見るに耐えない姿になっていたがすぐに再生して体を元に戻した。 「何だ、あの力は…。この力、まさかとは思うが…」 こうなったのは少し時間を遡ること数分前。まだグレンが倒れていて、カイルとレヴィアタンが戦闘していた時だった。 真っ暗で何もない場所にグレンは1人立っていた。 「何だ、どこだ?俺は死んだのか?」 「ここはお前の意識の中でもあってそして、俺の意識の中でもある場所だ。」 すると、何もない場所から1人の男性が現れた。 男性は180cmくらいの身長に目にかからないさっぱりした黒の短髪と黒い瞳の青年で服は真っ赤なコートに中は黒いカッターシャツ、下も赤いジーパンだった。 初対面の相手であったがこの人が誰なのかは何となくグレンには分かっていた。 「…リフェル…だな?」 目の前にいる男は以前からグレンの体の中から話しかけてくる悪魔、リフェルだった。 「流石、俺の選んだ人間だな。そうだ、これが俺の本当の姿なんだが、契約によってここから出られないのは言うまでもない。だが、契約する時に言ってなかった事があったんだ。」 契約や俺が選んだなど、グレンとリフェルが知っているワードが出てくる。 「言ってなかった事?」 「そうだ。それは、お前の命に危機が訪れた時に俺がお前の体を一時的に入れ替わる事が出来る!」 「入れ替わる…だと?」 「そうだ!お前は倒れてるせいで現在いつ殺されてもおかしくない状態だ。カイルってのがもし負ければお前は殺されるし、そして俺も死ぬ。そうならない為に俺が代わりにレヴィアタンの奴を倒してやる。だからさっさと俺に替われ!」 そう言ってリフェルは手を前に出すとグレンはそれを振り払って拒否した。 「無理だ。いくらお前でもお前は悪魔。俺の故郷、キュアリーハートを壊した事には変わらない。俺はお前らを利用はするが利用されるのは死んでもさせん!」 グレン自身はいつもの口調で言ってるつもりだが今は顔を赤くして手がワナワナと震えていた。 人格を失ってもグレンには人間としての感情が僅かながらにも残っていたのだ。 リフェルはハァと溜息を吐いた。そして口を開く。 「…っち、人間は本当にめんどくせー。今までお前は自分だけを守ればよかった。それは死ぬのも自分の自由。けどな、今のお前には守るべきものがある筈だ。」 「俺には守るものなど…」 「ミーナって女が死んでもいいのか?」 その瞬間、グレンは喋る口を止めた。 「……」 「お前だけが死ぬのは勝手だが、お前が死んだら誰があの女守る?」 「そんなもん…イフリークの団長に任せれば…」 グレンの肩にポンッと手を置いたリフェル。 「嘘だな。お前は特定の人間を仕方なしに守るような奴じゃねー。お前はお前自身の意思であの女を守ろうとした。いい加減、自分だけ守ってるフリしてんじゃねーよ!」 リフェルが両肩を持ってグレンの目を凝視しながら言った。 「…自分だけを…守る?」 目を開いたままポツリと呟くグレン。 そして、グレンは思い出す。 自分は何の為にリフェルと契約したのか。何の為に力を手にしたのかが頭の中に流れてくるように思い出した。 思い出した直後、グレンの表情はまるで復讐に燃えているかの様な強面に変化した。 「俺は、悪魔を根絶やしにする。もう、これ以上…人間はお前ら悪魔の自由にはさせない!俺が全部守ってやる!何が何でもだ!」 復讐の為に誰かを守りたいという感情によってグレンには正常な意識が保たれていなかった。 それを狙っていたかの様にリフェルはニヤリと笑みを浮かべた。 「そうだ、その調子だ!お前は強い…お前には力がある!強くなりたい、それこそ我が[強欲]に相応しい感情だ!さぁグレン、お前は強い。だから…眠れ。」 リフェルは人差し指でグレンのデコに触れるとグレンはそのまま意識を失った。 「よしっ!今から俺の力でレヴィアタンの野郎を一捻りにしてやるよ!」 そして現在、グレンの体を手にしたリフェルはレヴィアタンを圧倒していたのだ。 上空から空間移動で地上に戻ってきたグレン(リフェル)。 レヴィアタンはその場から高速で移動するがリフェルもそれに合わせて高速で移動した。 「俺から逃げられるとでも思ってるのか?」 高速で移動しながらリフェルは手を広げレヴィアタンと焦点を合わせて手を握った。 すると、レヴィアタンは触れられてもいないのに何故か動きが止まってしまった。 「なっ!体が…動かん!」 手を握ったままレヴィアタンに近づき、リフェルはレヴィアタンの顔の付近でささやいた。 「俺のこの、悪魔の手(デビル・ザ・ハンド)の力を忘れたのか?俺のこの手からは逃げられねーぜ。」 そう言ってリフェルはそのまま握ってない方の手で拳を作るとそのままレヴィアタンを殴った。 黒炎を纏った状態である為、殴った所から爆発が発生するがリフェルの悪魔の手で握られてる事でレヴィアタンは飛ばされず静止した状態であった。 「ぐっ…相変わらず…意味が分からない力だな、リフェル…いや、こう呼ぶべきだな。」 「7つに分断されし悪魔、獄魔7将・強欲の悪魔 マモン。」 リフェルの言っていたこの悪魔の手(デビル・ザ・ハンド)は腕が通常の状態で黒炎を纏っている為、普通のパンチも黒炎の爆発を発生させる事が出来る。 そして、さっきレヴィアタンを触れずに掴めたのも悪魔の手の能力でこれは対象となるものが自分の目に入るところであれば約1kmほど離れていても掴んで固定する事が出来る。 掴める物は大きさ、質量を問わず物体であればどんな物でも掴めるのである。 それ故にリフェルから逃げるのは不可能なのである。 リフェルはレヴィアタンの首根っこを素手でガシッと掴んだ。 「あぢぃぃいいい!!」 黒炎を纏った腕である為、掴んだ首根っこの部分から燃え始めた。 「その名前で、呼ぶなと言ったよな?カスが!」 リフェルは目を最大に開眼させながらドスのきいた声を放つ。 危険と感じたレヴィアタンは自身の体を拡散させ、空気中の水分と一体化して身を隠した。 「誰がカスだ!どうだ、これでテメェも僕を掴む事が出来ねぇよな?テメェは原型のあるものしか悪魔の手で掴む事が出来ない!」 レヴィアタンは空気中に拡散した状態で感情を高ぶらせながら挑発した。 しかし、リフェルはそんな挑発にも動じず目を閉じた。 「馬鹿はお前だ。」 そう言って目を開けた瞬間、リフェルの周りから黒炎の爆発が起きた。 爆発が起こって直ぐに何もない所から全身が燃えた状態のレヴィアタンが現れ、その場で悶え苦しんでいた。 「ガアァァああああ!!…何故だ!…何故、俺が燃えている!?」 「簡単な話だ。お前は空気中の水分と一体化出来るが空気中には酸素もある訳だ。当然、酸素は火をよく燃やす成分なのは言うまでもない。いわばお前は至近距離で俺の黒炎を喰らってるのと変わらん。」 「ぐっ!…」 レヴィアタンは再び体を液体に変化させて黒炎を消すが、さっきよりも息切れが激しくなっていた。 「ハァ、ハァ…あれ?僕、何で…こんなに息、あがってるんだ?」 「どうやら気体の状態で俺の黒炎を浴びたからだ。次にあの状態で黒炎を喰らったら死ぬだろうな。」 「死ぬ?この、僕が…死ぬ?ふざけんな!!」 レヴィアタンの髪の触手全てがリフェルを襲う。 しかしリフェルはその触手全てを悪魔の手で振り払うと全て燃えて無くなった。 そして、更に黒炎を纏わせた拳をレヴィアタンから離れた場所から放った。 拳から放たれた黒炎は離れた場所にいるレヴィアタンを飲み込むとすぐに爆発が生じる。 爆発によって発生した爆風は砂漠地帯の砂を巻き上げ、カイルは吹き飛ばされないように両腕で顔を隠して踏ん張りながらハンジの亡骸を影で包んで守った。 爆発が収まるとレヴィアタンの姿が現れた。 「ァ…アガァッ…」 全身が黒炎によって人の形を保てておらず、意識はもはやないに等しいぐらいにもうろうとしていた。 そして、とうとうレヴィアタンはその場に倒れ込んでしまった。 「けっ!他愛もねぇ!こんな弱い奴が獄魔7将かよ。魔法も大したことねえしお前、いらねぇや。」 そう言ってリフェルは手の焦点をレヴィアタンに合わせると手の平から黒炎の球体を発生させた。 「待て!…一つ…聞きたいことがある!」 倒れた状態のまま声を振り絞るレヴィアタン。 リフェルはちっ、と舌打ちをするが手を向けたまま黒炎を放つのをやめた。 「…何だ。言ってみろ、3秒以内にな。」 リフェルの無茶振りを無視し、レヴィアタンはゆっくりと口を開いた。 「…お前の目的は…何なんだ?人間に力を与えて僕たち悪魔を殺す目的は…何なんだ!」 「目的…ねぇ。俺は、ただ自分の強欲の為に行動してるまでだ。その"欲"を満たすのにお前らは必要ないだけだ。最後に残す言葉はそれだけか?」 そう言って再びリフェルは黒炎を放つ準備をするがすかさずレヴィアタンは口を開いた。 「しょ、正気か!お前は…全悪魔を敵に回して生きられると思うな!今回はお前が戦って運良く僕を倒せたが、その体の持ち主じゃこの先命はねェぞ!その時は他の獄魔7将がテメェらを完膚なきまでに…」 レヴィアタンは倒れたままリフェルを馬鹿にしている途中で、リフェルは掌の黒炎を放った。 放った直後、今までよりも巨大な爆発が辺りを覆い尽くした。 爆発によって黒炎が燃え盛り、リフェルはチリとなって消えたレヴィアタンのいた場所を見つめながら言った。 「…上等だ!悪魔だろうが何だろうが、俺の欲望の邪魔する奴は全部俺が潰してやる。」 リフェルはそう言うと両腕に纏っていた黒炎が消え、瞳が元に戻ったがその場に倒れてしまった。 どうやら、リフェルでいられる時間が終わったのだろう。 影で隠れて居たカイルはハンジの亡骸を背負ってグレンの側に近寄った。 数分後、グレンが目を覚ますとキョロキョロと周りを見渡した。 「ここは…どこだ?俺たちは馬車に乗っていた筈…」 「気がついたか、紅の悪魔祓い。」 背中を横の岩にもたれていたカイルはグレンが目が覚めたのに気がついた。 「何故、お前と俺しかいない。それとその死体…」 「おいこら、死体って言うんじゃねえ。」 「そんな事はいい。ミーナはどこだ?何故俺がここにいる。あの悪魔はどこだ?俺が殺してやる!」 「お前、記憶がないのか?その悪魔なら、お前が倒したじゃねーか。」 カイルの言葉に耳を疑うグレン。 馬鹿な、確か俺は気を失っていた筈。俺が倒したなんてあり得るわけない。 「まあそんな事は後回しだ。まずはあいつらと合流しないとこのままじゃ俺たちこの砂漠の大地で干からびるぞ。」 まだ夜の3時くらいだから暑さはあまり感じないがこのティラーデザートは朝方になると極端な猛暑になる為、歩いての移動は非常に困難なのである。 「いや、その必要はない。ここはもうシルフの近辺だ。3時間ぐらい歩けば着くぞ。」 「歩くだと!?無茶言うな!夜通し戦った後なのにそんな体力残ってねえよ!」 カイルが反抗するがグレンは表情を一切変えずに。 「じゃあお前は来なくていい。そこで野垂れ死ぬかあいつらの所へ歩けばいい。…一応さっき魔力を感知してあいつらの居場所が分かったが、あいつらが今いる所へお前が行けばシルフの倍の時間は掛かる。」 「えっ?て事は…6時間?」 カイルは倍の時間と聞いて顔が真っ青に変わった。 「別に引き止めはしないが、どうせ歩いて行くなら利口な道を選んだ方が良いって話だ。お前が死ぬ事で悲しむやつだっているだろ?」 「悲しむやつ?…そうだな、分かった。お前とシルフまで歩く。」 「懸命な判断だ。じゃあ、行くぞ。」 そう言ってカイルはハンジの亡骸を背負い、グレンとシルフまで同行する事にした。………ここは、どこだろう?気付いたらそこは真っ暗な空間にミーナはいた。「ここは…旅に出る前に見た夢の中みたい。夢の中のはずなのに夢じゃないみたいな…」そう。ここは初めてミーナが夢の中で優しい心を持つグレンと出会った場所であった。「ミーナ。」この声は?そう思ったミーナは声のする方を向いた。そこにはあの夢の中で初めて出会った黒髪のグレンが居た。「あなたは、あの時夢の中で会ったグレン?」そう質問すると、何故か黒髪のグレンは涙を流しながら言った。「…お願い…助けて欲しい。」そう言ってグレンは闇の中へと消えていく。「え、ちょっと待って!どこ行くの!…ねぇ!」ミーナは呼び止めたがグレンは何も言わずに消えていく。夢の中で走っていると何かにぶつかる様な衝撃が伝わった。「痛っ!」目の前で誰かにぶつかってしまったのか、ぶつけられた人は痛みを口にした。「…ハッ!…夢か……。」「…もぉ。夢か…じゃないわよ。何時だと思ってるの?」ミーナとぶつかったのは隣で寝ていたエミルであった。時刻は既に午前2時を過ぎており、起こされたエミルは滅茶苦茶不機嫌そうにミーナを睨みつけていた。「ご、ごめんねエミル。変な夢見てしまって…。」「もぉ……」そう言ってエミルは再び布団を被って眠りについた。「(今の夢、何だったんだろ?あの黒髪のグレンが現れたって事は、現実のグレンに何かあったんだろうか?)」「…ちょっと駄目だ…もう、眠い…。」少し考えたミーナであったが眠気には勝てなかった為、彼女もすぐに布団を被って眠りについた。ミーナ達はクレーアタウンでアスモディウスと戦ってから10日程の日が過ぎ去っていた。カイルはクレーアタウンで起きた悪魔との戦いで、カレンが悪魔サイドに居たことを西の大国イフリークの騎士団達に無線で伝えた。騎士団達の反応はそれぞれ違っていたが、全員悲しみに暮れていた。特にエバルフ。彼はカレンととても仲が良かった為、敵となったカレンを聞いて現実を受け止めきれずにいた。イフリークに残った12騎士長は5人4騎士長、ウェンディー・ソルディア5騎士長、シキ・ラインハルト6騎士長、エレンシー・ガーデン7騎士長、アレックス・マーベルそして12騎士長、エバルフ・シュロンこの5人はカイルから聞いたレミールに残った騎士長達の訃報を聞き、後日直接レミー
2人が見た通り、確かにヒスイはグロードを助けた。それは紛れもなくその場で起きた事実である。しかし、2人の記憶による事実と今こうして実際に起きたヒスイが刺された結果が矛盾している。何があったのか?それはベリエルの持つ虚無の魔眼の力が原因である。[あらゆる事象に対する再試行]これはその時に起こった場面を無かった事にし、再度その場面をやり直す事が出来る力。例えるなら、(殴られた→やり直し→殴られる前に戻る。)といった様に、実際起きた事を無かった事にし、起きる前に戻る事が出来る。言うなれば、時を巻き戻す力に近い力である。この力は虚無の魔眼を見せた相手にのみ発揮する。先程2人に虚無の魔眼を見せたのはこれを行う為であった。南の大国シルフで、カイルがハイド(ベリエル)に優勢だったがそれを一気に覆されたのも、この力が原因である。(第18話参照)そしてグロードが気がついた時にはヒスイは既にベリエルの黒い槍に突き刺されており、引き抜かれたと同時に後方へと倒れていく。「ヒスイ!!!!」ヒスイが倒れていく姿を見て叫ぶグロード。何故こうなったのか、考える余裕さえ無い。目の前で妻が刺された事に対する怒りがグロードの心を真っ赤に染め上げる。そしてグロードは空間移動でベリエルの元まで転移し、ベリエルの胸ぐらを掴む。「ぐっ!…」この時、何故かベリエルは虚無の魔眼を見せてこなかったが、この時はそんな事が気にならないくらい怒りの感情のみがグロードを突き動かしていた。怒りが爆発したグロードは胸ぐらを掴んで動けなくなったベリエルの顔面を拳で連打した。「うおおおおおお!!!!」ガスッ!ガスッ!ガスッ!ガスッ!……!何度殴っただろうか。何故か無抵抗のベリエルをグロードは怒りのままに殴り続けた。そして、右拳に魔力を込める。全属性を操れるグロードは、右拳に全属性の力を纏った。全属性とは、基本属性である8属性(火、水、風、雷、土、空間、光、闇)。これらを全て併用すると、相反する属性同士が互いを弾き合う。普通に使えば術者に影響が及ぶ危険な行為。しかしグロードは呪いにより死なない不死身の身体である為、その様なリスクが無い。無尽蔵に溢れ出る魔力を、右拳に纏った全属性の魔力へ更に加算する。魔力が増えれば弾き合う力も更に強化される。グロードはその強大すぎる力を全て、ベリ
ラウスが産まれてから5歳になった頃。未だグロードはベリエルを見つけられずにいた。その日は休日出勤で働きに出ていたヒスイの代わりに、グロードがラウスの世話をしていたのだった。「お父さん!」グロードの所まで走って近づくラウス。ラウスは髪色は母親譲りの綺麗な白銀であったが、顔はどちらかというと子供の頃のグロードに似て優しそうであった。「どうしたんだ、ラウス?」「この魔法書に書かれてるやつが分からないんだけど、教えて欲しい。」ラウスはどうやら魔法書を見ながら勉強しており、グロードは分からないところを教える為に一緒に見た。ーーこうしてると、ベリエルに勉強を教えてた頃を思い出す。一瞬ベリエルを思い出したが、すぐにその思い出を振り払った。「(いかん!ラウスはあいつとは違う!あいつはもう弟じゃ無い。憎むべき男なんだ。)」グロードは邪念を払う様にして、そう自分に言い聞かせた。「どうしたの?」「あっ…えっと、何でも無い!…ここが分からないんだな?」グロードはラウスが聞いてきた分からない部分を見て驚いた。「(…これは…高等魔法の専門書じゃ無いか。とても5歳が理解出来るレベルじゃ無いぞ。)」ラウスは魔法の理解力が異常に高く、それは紛れもなく10歳で実用性のある魔法を発明していったグロードの血筋であった。「ここはな、こうだから……。」噛み砕いて教えたつもりだがどうしても難しい専門用語を使う為、高校生でも理解が困難なレベルであった。しかし、ラウスは。「ありがとう!それだけ分からなかっただけだから!」 そう言ってラウスは専門書を持って部屋に戻って行った。ーーあの難解な本の一部分が分からなかっただけ?「…凄いな。流石は、俺の息子だな。」5歳にしては凄まじい魔法の才能を発揮するラウスに驚いていたが、自分の息子がこれ程の才能を持っている事に対して誇らしくなった。それから7歳になって少し身体が大きくなったラウスは体術の面でも凄まじい才能を発揮していた。「やああ!!」ラウスは殴る時に上記の様な子供っぽい掛け声を出すものの、それまでの動きが凄かった。グロードは手加減してるものの、まるで次に動き出す足の動きが見えているかの様にラウスは予測していた。その様子をヒスイはちゃんと見ていた。その夜、ラウスが寝静まった時にヒスイから話があった。「あの子、
月の遺跡から現れた古の化け物達が世界中を暴れ回った事により、多数の他国の人が亡くなったこの事件は世界中で瞬く間に広がった。現去流時(げざると)で生き返るのは、同じ種族の人間のみ。つまり、月の民が生き返った事により他国の人間は殺されて亡くなったままであった。これにより、今回の首謀者は今まで古の化け物達を野放しにし続けてきた月の民の責任だと言われ、これが更に月の民達への差別が助長される要因となった。この差別は風化される事が無く、時間と共に他国からの恨みばかりが募っていった。一方、古の化け物達を倒し世界の人々を救ったと持ち上げられたグロード。彼は世界の英雄として一躍有名人となった。沢山の人に賞賛され、感謝される日々。中にはグロードが古の化け物達を倒した事を記す為、絵物語を書きたいと懇願してきた絵師も居た。ーーもう、好きにしてくれ。投げやりに全てを受け入れるグロードは、ほとぼりが覚めるまで、人々の"英雄ごっこ"に付き合った。そして50年が経った頃には彼の事を知る者が死に去っていき、その頃にはもうグロードの事を英雄と呼ぶ者は居なくなっていた。50年も経てば時代の流れもそうだが、人々の価値観や文化も大きく変わっていく。しかし、変わらないものもあった。1つは月の民の差別。これはいつまで経っても、古の化け物達が世界中を暴れ回り、その生まれ変わりが現在の月の民だと後世に語り継がれていた。その為、実際古の化け物達が暴れた所を見た事がない後世の人々も、月の民が恐ろしい存在であるという価値観だけ植え付けられていた。そしてもう1つ変わらない事がある。これは50年経つ前から感じていた事だ。歳を取っていない。グロードは40歳の姿から変化が見られ無かったのだ。何故変化が無いのか?それはベリエルが掛けた呪いのせいであった。ベリエルはリオ王国の人達を超月食の日に自身の生命エネルギーに変換させ、それによってベリエルは不老不死となった。そんなベリエルに掛けられた呪いにはある条件があった。「この呪いは、術者が死ぬまで継続されるものである。」つまり、これはベリエルが死ぬまで呪いが解けないという事だ。不老不死になったベリエルは死なない為、呪いを掛けられたグロードとアガレフも必然的に不老不死となってしまった。これが、2人が400年間死ぬ事なく生き続けてきた理
それからもグロード、アガレフ、ベリエルは共にリオ王国で平和な日々を過ごしていった。グロードはあれから魔法の鍛錬を積んでいったが、時々月の遺跡へ出向いてアマルとサマスに修行を付けてもらう事が増えた。アガレフもグロードと一緒に月の遺跡へ出向き、修行を付けてもらっていたが彼には既に沢山の弟子が居た為、都合が合わない日が多かった。そしてベリエル。彼はこの頃になると部屋に閉じ篭もる事が増えた。理由は分からないが、何を聞いても調べ物をしてるだけだと言い、詳しい事はグロードとアガレフに教えようとしなかった。一度気になったグロードとアガレフはベリエルの部屋に行ってみた。扉の前でアガレフがグロードに言った。「ベリエルの奴、朝から部屋でずっと何かしてるみたいなんだが…どうも様子が変なんだ。」「ああ。確かに変だ。ベリエルがこの部屋に閉じ篭もってる間、一切の魔力を感じないからだ。」異変に気付いたのはグロードも同じであった。魔力を感じない。というよりも、まるでそこにベリエルが存在していない様に感じられた。気になったグロードはベリエルの部屋の扉をコンコンとノックした。数秒待っても反応は無く、静かなままであった。「…やはり様子が変だ。扉を開けるか?」「待て、アガレフ。流石に勝手に入るのは…。」すると目の前の扉がギィィッとゆっくり開く音が聞こえてくる。中からは相変わらずクマが酷いもののいつもの変わりない表情と姿、そして魔力のベリエルが出てきた。「…どうしたの、兄さん達?」何故か扉の前にグロードとアガレフが居た為、キョトンとした表情で2人を見ていたベリエル。「…いや、…何でもない。ずっと部屋に閉じ籠ってるから心配になってな。」「そ、そうだ。偶には、外に出て身体を動かしたらどうだ?」さっきまで魔力が感じられなかったベリエルはまるでそこに居ない様な気配であったが、突然その場に現れた様な気配に2人は驚く。しかし、一先ずベリエルに変わりがない事を確認して2人は安心した。「……んー、確かにそうだね。偶には身体を動かさないとね。…明日、久し振りに兄さん達に稽古を付けてもらおっかな!」グロードとアガレフにそう言われて頭を傾げ、少し考える様な間が気になるがすぐに笑顔になった。それを聞いたグロードとアガレフもベリエルに釣られて笑顔になった。「ああ。勿論だ。」「
そして次の日の朝。グロードとアガレフは月の遺跡へ向かう準備をしており、王宮の外には2人を見送る為に沢山の国民達が集まっていた。2人はリオ王国内では沢山の任務を受けていたが、国外に出て何かをするのは初めてであった。更にリオ王国内では英雄の様な存在である2人は皆んなの憧れであり、国民達全員から愛される存在であった。「グロード様!アガレフ様!お気を付けて!」「ああ。行って来る。」王宮の兵士に言われたグロードとアガレフは一礼し、王宮を出た。王宮を出た途端、国民達による大きな歓声が飛び交った。「お二人共ー!どうか無事に帰って下さい!」「月の遺跡の化け物なんかに負けないで!」「グロード様とアガレフ様が組めば敵なんて居ないさ!」「そうさ!何たってリオ王国最強の魔導士だぜ!化け物なんて全部倒してくれる筈さ!」「頑張れー!!」向けられる歓声に対し、それに応える様に2人は国民達に手を挙げて振った。リオ3世とベリエルはその場に居なかったが、王宮のベランダから2人が歩いて出て行く姿を見ていた。「ベリエル。お前もいつかきっとあいつらみたいになれる筈だ。」「…はい。僕も兄さん達に追いつける様に努力します。」リオ3世は2人の姿を見つめながらベリエルに向けてそう言った。ベリエルはそれに対し表情を変える事なく、リオ3世と同じ様に2人を見つめながらそう答えた。何を思っているのか分からない程、表情が全然変化しないベリエル。グロード達と暮らしていく内に嬉しかった時の表情だけは作れる様になったベリエル。だが、大きくなってもそれ以外の感情による表情は作れない様だった。その表情の裏に潜む感情を読み取る事は誰にも出来なかった。数週間後、グロードとアガレフはようやく月の遺跡の近くに着いた。月の遺跡の周りは乾燥地帯である。現在はティラーデザートと呼ばれる砂漠地帯となっているが、それでも当時は所々に草木が生えていた。しかし月の遺跡に近づけば近づく程、乾燥が酷く草木もあまり生えていなかった。そしてようやく月の遺跡には着いた。月の形をした石像が上に飾られた神殿が遺跡の中央に建てられ、その周りには[月の民]と呼ばれる民族が住む石造の家が多数建てられている。化け物が居ると聞いていた為、酷く荒らされているイメージを持っていた2人であるが、見た感じその様な形跡は見られない
アガレフは家の前で見送ってくれるリーナと、彼女に抱き抱えられているミーナの方を見た。 あの赤ん坊の頃に比べると少し大きくなったミーナ。金髪で青い瞳に綺麗な顔立ちが、どことなく母親であるリーナに似てきた気がした。 「じゃあ、行ってくる。」 「…うん。ずっと、待ってるからね。」 そう言ってアガレフとリーナは最後の口付けをした。 そして最後にミーナの方を見た。 「おとー。おとー。」 手を伸ばしながらお父さんと呼ぼうとしてるミーナ。その純粋無垢な瞳には、今日を最後に会えなくなるなんて微塵も思っていないのが分かる。 アガレフはミーナの額に手を当て、撫でながら言った。 「ミーナ。これか
「皆さん、落ち着いて下さい!こっちへ避難して下さい!」巡回してたカレンは突然の悪魔襲撃に混乱してるレミールの国民達を悪魔が少なそうな場所へ誘導し、前方から襲って来る悪魔を返り討ちにしていた。しかし、地上へ繋がる道はアスモディウス達が通ってきた場所しかこの国には無い為、国民達は結局逃げ道から遠ざかっていくだけだった。カレンは只ひたすら、逃げ道の方から現れる悪魔達を斬り倒していた。「(何で悪魔がこんなにも湧いて出て来るの!?国の入り口で待機してたザジさんは?もしかしてやられたの?)」そんな事を思いながらカレンは剣を振り続けた。一方、他の場所でも騎士長達は悪魔達と交戦していた。「悪魔
ライクは首に掛けている雷神の連鼓を妖力の力で肉体へと取り込んだ。取り込んだ瞬間、高電圧の雷がライクの周囲を纏い始める。ライクの後方から1つ1つが直径10cmくらいの鼓が8つ現れ鼓同士が30cmくらいの円形となって背中に浮遊した。そして頭からはニケル同様鬼の様な角が反り上がる様にして生えた。「テメェらを、一瞬で地獄へ送ってやるよ。」そしてライクは一瞬でその場から消えた。悪魔達もそれに対応して移動し、移動したライクを数十人で取り囲んだ。ライクは腕を胸の前でクロスさせながら一言唱える。「ー鳴雷(なるいかづち)!」背中の上から7番目(右回りで数えて)の鼓が光るとライクはクロスに構え
これは愛を知らずに育ってきた男の話。彼はこれまでの人生の中で物心ついた頃から愛という物に触れる事なく生きてきた。ネル・ナイトフォース。彼は5歳まで北の大国の中心都市部にある貴族の家で奴隷として過ごしてきた。物心付く前から奴隷として仕えていたが、そこでは人権というものが存在しなかった。「おい、ゴミ!さっさとこの食器片付けろよ!」その屋敷の主である中年男は仕える奴隷に向けて済んだ食器を片付ける様に命令した。「…はい。」命令を受けて出てきたのは当時4歳のネル・ナイトフォースだった。彼は肌着同然の薄い半袖の服にヨレヨレのズボンを履いていた見窄(みすぼ)らしい少年だった。身体を洗わせ